【 ネ ボ 山 】

 

 

 ネボ山s

ネボ山

 

ネボ山は、ヨルダン西部に位置し、近郊の町マダバの北西10キロメートルの距離にある標高802メートルの高い尾根である。である。

 

アバリム連山(ヨルダンを東から南東に横切り、死海まで延びる山脈)の主峰の1座であり、海抜約マイナス400メートルの死海との標高差は1200メートルとなる。死海の東北端より東約9キロメートルの位置にあり、山頂からは聖地の全景と、北にヨルダン川渓谷の一部が展望できる。
通常、エリコヨルダン川西岸地区の町が頂上から見え、よく晴れた日であればエルサレムも望むことができる。

 

 ネボ山から死海を望むs

ネボ山から死海を望む
(海抜約マイナス400m)、標高差1,200m

 


 

目次

 

宗教的意義
遺跡
近年
画像
参考文献
関連項目

 


 

宗教的意義

宗教的意義

 

山頂より約束の地を眺望するモーセの描画(1907年)

 

申命記 の最後にいたる章によると、ネボ山は、神がイスラエルの民に与えられた約束の地ヘブライ人の預言者モーセに眺望させた場所とされる(申命記32章49節)。そして、モーセはモアブの平野からネボ山、エリコの向かいにあるピスガの頂へと登った(申命記34章1節)。

 

ピスガとは「尖った所」の意で、ネボ山の西2.5キロメートルのラース・エ・シャーガ (Râs es Siâghah〈Ras es-Siyagha〉) であり、このピスガの頂は標高710メートルとなるが、ネボ山と同一もしくはその一部分として混同される。

 

キリスト教の伝承によれば、モーセは神によってこのネボ山に埋葬されたが、モーセの永眠の地は不明である。申命記によると、神はモーセをベテ・ペオル (Beth Peor) に近いモアブの地の谷に葬られたが、今日までその墓を知る者はいない(申命記34章6節)。ベテ・ペオルは、一説にはネボ山の山麓にある「モーセの泉」(アイン・ムサ、Ayn Musa)の場所であるとされる。

イスラームの伝承でもまた同様にいわれているが、モーセの墓所はユダヤの荒野のうち、エリコの南11キロメートル、エルサレムの東20キロメートルに位置するナビー・ムーサー(マカーム・ナビ・ムサ、Maqam al-Nabi Musa)であるともされる。ナビ・ムサは「モーセ」の意である。

 

学者は、現在ネボ山として知られているこの山が、モーセ五書に示された山と同一であるかどうかの議論を続けている。 また、マカバイ記二 2章4-7節によると、預言者エレミヤ幕屋契約の箱をこの地に隠したとされる。

 

遺跡

遺跡

 

洗礼堂床面のモザイク

 

1933年、山頂部の標高710メートルのシャーガ(Syagha〈ラース・エ・シャーガ〉)で、 教会修道院の跡が発見された。その教会は当初、4世紀後半にモーセの死の場所をしのんで建てられた。教会の構造は典型的な バシリカ様式による。教会は5世紀後半に拡張され、西暦597年に建て直された。

 

教会については西暦394年に一人の女性、エゲリアの“巡礼記”に初めて記載された。

 

モザイクで覆われた教会の床下からは、天然の岩をくり抜いた6基の墓が発見されている。モザイク画は保存・修復され、現在も、年代の異なるモザイクの床の断片を見ることができる。現代の教会はその場所を保護して、礼拝の空間を備えるよう建設されている。

 

近年

近年

 

山頂からの距離を示す案内板
ガリラヤ湖(ティベリアス湖) 106km
ナーブルス 66km
エリコ 27km
ラマッラー 52km
エルサレムオリーブ山) 46km
クムラン 25km
ベツレヘム 50km
ヘロディウム 47km
ヘブロン 65km

 

2000年3月20日、ヨハネ・パウロ2世(ローマ教皇)は聖地への巡礼の中で、ヨルダンで最も重要なキリスト教霊場の1つであるネボ山を訪れた。訪問時、ヨハネ・パウロ2世はビザンティン様式の礼拝堂の側に、平和の象徴としてオリーブの樹を植えた。

 

ベネディクト16世 (ローマ教皇)は、2009年5月9日にこの地を訪れて演説し、エルサレムの方向を山頂から眺望した。

 

山頂にある蛇のような十字架の造形物(青銅の蛇の記念碑)は、イタリアの芸術家ジョヴァンニ・ファントーニにより作成された。それはモーセが荒野で作って掲げた青銅の蛇(民数記21章9節)およびイエス・キリストが磔刑にされた十字架(ヨハネによる福音書3章14節)を象徴している。

 

画像

画像

 

            

かつて修道院の扉に使用されていたモーセの記念碑 (The Abu Badd)

2000年に訪れたヨハネ・パウロ2世 (ローマ教皇)の記念碑

保存されたモザイクの一部

青銅の蛇のモニュメント


 

参考文献

参考文献

 

• 牛山剛『ヨルダン・シリア聖書の旅』ミルトス、1988年。
   ISBN 4-89586-004-3
• ミルトス編集部『シリア・ヨルダン・レバノン ガイド』ミルトス、1997年、96-97頁。
   ISBN 4-89586-016-7
• レベッカ・ハインド『図説 聖地への旅』 植島啓司訳、原書房、2010年、137-139頁。
   ISBN 978-4-562-04591-4
• 『聖書 新改訳』新改訳聖書刊行会訳、日本聖書刊行会、1970年。
   ISBN 4-264-00445-4

 

関連項目

関連項目

 

•アバリム(英語版) - アバリム連山
•ネボ (聖書)(英語版)
•ナビー・ムーサー

 


 

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